<教育プログラムの目的・効果>
高齢化社会の到来により、病気を持って生きる市民が増え、治癒しない疾患を持った患者や、意思決定能力がない患者に対して、家族や医療者が医療上の方針決定に苦慮する機会が増えている。そのような状況に置かれても、いつでも、どのような場合でも『患者の意向を尊重した』医療を行うために『アドバンスケアプランニング(Advance Care Planning:以下ACPと略)』の概念が、英国、米国、豪州を中心として始まり、各国に広がりつつあるが、わが国ではその対応が十分ではない。
ACPとは、将来起こりうる病状の変化に備えて、医療従事者が患者と家族とともに、患者の医療上の希望、生命維持治療に対する意向、医療に関する代理意思決定者の選定などを行うプロセスを指す。ACPを実施することにより患者の医療に関する満足度が向上し、家族の心理的負担や抑うつ、不安が改善することが明らかとなっている。ACPとその実践に必要なコミュニケーションを教育することにより、どんな時でも患者の意向を尊重し、家族を支援する医療を実践することが可能となる。
<教育プログラムの履修方法及び修了要件>
- 米国、豪州、ドイツ、スペイン、シンガポール、香港で普及しているACPの教育プログラムであるRespecting Choicesプログラムを本院に導入する。
- 対象者:MSW、看護師、医師、地域の医療従事者
履修期間:12時間
<教育プログラムの指導体制>
- Respecting Choicesプログラムの公認ファシリテーターである本学教員(医師)が、日本語版のプログラムを翻訳、改訂し実施する。
- 緩和ケアチームの医師と看護師がファシリテーターを行う。
- 初回は、米国から同プログラム開発者を招請したワークショップを実施する。
<教育プログラムの運営に関する特記事項>
本プログラムの実施は、わが国で初めてのACPの組織的な教育プログラムであり非常に革新的なものである。
<教育プログラムの新規登録者数等の目標人数>
年間で、MSW9名、看護師20名、医師5名
<評価指標(事業成果等の分析)>
ACPを導入した患者の救急外来受診率、入院率
ACPを導入した患者のアドバンスディレクティブの表明率